[書評] 『火花』又吉直樹 / 自分が人生に求めていることを知ろう。

小説・エッセイ

内容説明

脚光を浴びない芸人たちの話

売れない芸人の徳永は、天才肌の先輩芸人・神谷と出会い、師と仰ぐ。

神谷の伝記を書くことを乞われ、共に過ごす時間が増えるが、やがて二人は別の道を歩むことになる。

笑いとは何か、人間とは何かを描ききったデビュー小説。

第153回芥川賞受賞作。芥川賞受賞記念エッセイ「芥川龍之介への手紙」を収録。

著者について

読書好き芸人、ピース又吉

又吉 直樹

1980年大阪府寝屋川市生まれ。よしもとクリエイティブ・エージェンシー所属のお笑い芸人。コンビ「ピース」として活動中。

2015年『火花』で第153回芥川賞受賞。

著書に『第2図書係補佐』『東京百景』、せきしろとの共著に『カキフライが無いなら来なかった』『まさかジープで来るとは』、田中象雨との共著に『新・四字熟語』、堀本裕樹との共著に『芸人と俳人』がある。

BOOK著者紹介情報

読み終えての感想

出会いは人生を変える

出会いは人生を良くも悪くも、あっという間に変化させてしまう。自分にとって好都合な出会いもあれば、反対に自分を追い詰めてしまう出会いもある。

人間は、如何なるときも都合の良い出会いを確実に選択することはできない。

必然的な出会いも、偶然的な出会いも、結局は自分の選択の結果である。その出会いの結果を、その時々で受け入れるしかない。

新しい考え方の人に出会うことも、自分に無い価値観を持っている人と出会うことも、面白い世界観を持っている人と出会うことも、すべてが自分を成長、変化させてくれる人とは限らない。

出会いはポジティブな面ばかりではない。不要な出会いによって、自分を苦しめたり、自分にとって損な時間を過ごしたりすることもあるだろう。

既に自分の人生は、誰かとの出会いによって、進むべき道から外れているかもしれない。そのことに気づかず、誰かに圧をかけられ、無意識に方向がずれているかもしれない。

人間関係に正解はない。友達がたくさんいる人もいれば、友達が少ない人もいる。どちらの方が幸せか、には答えがなく、どちらにもそれなりの考え、価値観がある。

自分の人生を変える影響力を持つ人間関係に、疑問を持つことが大切だと、火花を読んで感じた。

周りの友人や知り合いは、本当に自分が心から必要としている人なのか。自分に合う人たちなのか。自分という人格を侵害していないか。それらを今一度、確認する必要がある。

重要なのは、自分の人生を守ること。自分が心から必要だと思える人、心から合う人との出会いを大切にする。

新しいことを受け入れるとは

新しいことを知ることは良いことである。しかし、新しいことは全て受け入れることが良いというわけではない。なんでも取り入れて、なんでも吸収して、なんでも受け入れていては、本当に大切なものを見失う。

新しいことを知るという経験には意味がある。ただ、知ることと受け入れることは区別するべき。自分の頭で、知った時点でそれを受け入れるべきか、そうでないかを判断しなければならない。

人生は取捨選択の連続。何かを受け入れるということは、何かを失うということでもある。受け入れること全てが、自分に都合が良いわけではない。

主人公は天才肌の先輩芸人を慕っていた。しかし、違和感を覚えるようになる。

本当にやりたいことは何なのか、自分がやりたくないことは何なのか、この先の未来、計画を持たずにただ下を向いて歩いていると、いつか壁にぶつかる。

経験は自分の武器になる。だが、経験を活かさなければ意味がない。新しいことを知り、それをどのように自分の人生を落とし込むか。全てを受けれるのではなく、自分に必要な要素だけを受け入れる。

そうして、自分に必要な新しいものを受け入れ続け、成長していく。

人生に正解なんて存在しない

人間は恐ろしいことに、依存してしまったらなかなかそこから抜け出せない。もし、好んで尊敬していた人が、本当は自分にとって不都合な人だったら、どうだろうか。尽くして尽くして裏切られてしまう感覚に似ている。自分にとって、自分の人生の正解は、自分にしか分からない。

他人の人生を羨ましく思っても、その人生をすべて真似することはできないし、その人生が自分にとって正しいか、適しているかは分からない。

何か新しいことを取り入れようと、もがき苦しんでも、得たものが自分を前進させてくれるかは分からない。

人それぞれ考え方や価値観、生き方が違うなら、常識的とか、世間的とか、一般的なんて言葉は気にする必要ない。

それらは、誰かの価値観であり、誰かの考え方であり、誰かの正解である。得体も知れないものに縛られて自由を奪われるなら、新しい常識を生むつもりで行動すればいい。

人生に正解など存在しないから、自分が好きなように生きれば良い。過去の自分も、現在の自分も、出会った人も、今いる場所も、すべて自分の選択でできている。選択の連続が、今をつくり出した。そして、今の自分の選択が未来の自分をつくり出す。

基準や比較対象がない人生だからこそ、自分が幸せと思える方向に進めばいい。その姿勢が、いつか誰かの共感を得ることに繋がる。

過去は変えられる

苦しい今、不甲斐ない今、悔しい今、悲しい今、変えたい今を選択してしまったなら、今からの選択で、未来を、楽しい未来、活力ある未来、嬉しい未来、進化した未来にすれば良い。

頭に思うだけでは、何も変わらない。自分で気づき、自分の力で、変えていかなければいけない。

火花を読んだ学んだことは、選択の連続で構成される自分の人生を、自らの手で、決断していくことが大切だということ。

どんな日を過ごしても、同じように時間は過ぎていく。選択にミスはない。ただ、自分で気づいて、変化を起こさなければ、ミスのままで終わる。間違った方向に進んでいても、誰も方向を正してはくれない。自分で気づいて、自分で修正するしかない。

周りに期待してはいけない。周りに期待するのは、周りに責任を押し付けようとしているから。自分の選択に期待すれば、責任を取るのも自分である。未来を創る今の選択に、自信と強い意志を持って、決断する。

どんな過去も、美談に変えられる。変えようと行動を起こせば、絶対に変えられる。

ただ現状に喚くだけでは何も起こらない。微力ながらも、未来を見据えて少しづつ努力できる人は、成長する。今にスポットライトを当てる必要はない。長いスパンで見たとき、自分が最も輝いているときに、スポットライトを当てればいい。

終わりに

人生観を揺さぶられた

自分の人生について、過去と未来を照らし合わせ、現在を生きる自分のことを深く考えさせられた。

自分が今までどのように生きてきて、これからどのように生きていくのか。ある程度年齢を重ねれば、良くも悪くも自分という人間を理解できるようになる。

能力や考え方、価値観など、自分の土台となる部分は既に出来上がっている。現実を受け入れるような年齢になった。

人間は常に、欲望を兼ね備えながら生きている。欲を言えば、何者になりたいとか、何が欲しいとか、何をしたいとかを考えている。

すべての望みを叶えることはできないかもしれないが、それでも小さな幸せを噛み締めながら毎日を全力で生きる人たちがいる。

思い通りにいかない人生でも、どこかに生きがいや頑張る理由を見つけ、成長しようと努力している人たちがいる。

ゲームのように攻略本があれば、人生はつまずくことなんてない。タイムマシンがあって、未来に起こることが分かっていれば、気持ちが楽になるかもしれない。

しかし、人生には攻略本も、タイムマシンもない。何が起こるか分からないし、攻略法も正解も不正解もない。

自分が今まで生きてきた人生、そしてこれから歩む道こそが、自分の正解のストーリー。

真っ直ぐな道ではないかもしれない。寄り道もたくさんするかもしれない。でも、たくさんの経験を積んだ方がきっと楽しい。曲がりくねった道でもゴールに繋がるのなら、自分の色を出して存分に道を曲げて進みたい。

どこまで進んだか、どこまで進むのか分からない人生だからこそ、良い時も悪い時もある。

それはみんな知っている。人生は必ずしもうまくいくものではないと。それでも、人生にリセットボタンなんてないから、進み続けなければいけない。

人生にリセットはないけど、リスタートはある。立ち止まっても問題ない。後ろに戻ることはない。でもまた、リスタートしよう。

リスタートはいつでもできる。何回でもできる。だから、どんな日々を過ごしても、前に進む。

火花を読んで、自分の人生観を刺激され、二度と戻らない時間を大切にしていこうと思えた。

自分の人生、悔いなく生きたい。どうせ後悔するくらいなら、やらなかった後悔より、やった後悔にしたい。

これからはじまる今日からの新しい人生。楽しんだもん勝ち。

以上になります。最後までお読みいただきありがとうございました。